さんぽに行きましょう

スイスに住む 犬のつれづれ日記

量子力学的 バレンタイン・デー

バレンタイン・デーの2月14日。

今週1週間、坊ちゃん達の学校はスキー休暇でして(スイスの学校は休暇が多い)、私たちは再び山のシャレーで過ごしておりました。

2月に入っても相変わらず残念な雪事情。スキーパスが有効活用されないまま今シーズン終了となってしまいました。

 

奇跡的に一晩雪が降った翌朝などは・・・

これなら1日スキー三昧では?と期待させられるものの

 

太陽が照り出した午後にはこの通り。あっという間に雪は溶けてしまうのでした。

 

話は戻り、バレンタイン・デー。非キリスト教国圏の日本では「女性が男性にチョコレートを贈る日」だと、皆さん何食わぬ顔でお話しされるのですが、ああ、なんと恐ろしい風習でしょう。チョコレートこわい〜。チョコレートこわい〜。

まんじゅうこわい〜などと笑いをとっている場合ではないのです。

なぜなら犬の私は、チョコレートを食べると強い中毒症状を起こし、命を落とす危険もありうるのですから。

愛(もしくは義理)という名のもとに毒をばら撒いて、何がそんなに嬉しいのか私には全く理解できません。普段は日本に強い憧れを抱いている私も、バレンタイン・デーだけは、日本にいなくて良かった、と思う次第です。

 

スイスでも、チョコレート攻撃作戦の風習はないにしろ、カップルが愛を祝う日には違いないようです。今年はパパ、ママにサプライズでちょっと贅沢なホテルのレストランでディナーご予約されたそうです。

結局パパ「サプライズで予約とったよ。」と、ご自分でバラしてましたけど。

 

そんな2月14日。宇宙規模で何か特別な力が働いていたのでしょうか。我が家ではなんとも不思議な出来事が立て続けに起こったのです。

 

パパは2日後、ロンドンに早朝出発するため、タクシーを自宅に配車してもらうよう、適当にネット上で見つけたタクシー会社に電話をかけられました。パパが自宅の住所を伝えられたところ、予約受付の方が

「え?それは私の住所ですけど?」

と、驚かれたそうで。

パパも受付の方も、お互いに何が起こっているか分からず混乱。もう一度住所確認をしたところ、パパと受付の方、同じ住所であることは間違いないようでした。

ということは・・・?

受付の方の名前を聞いてみたら、なんと、たまたま我が家のお隣さんだったそうです。

へぇ!これって、どんな確率で起こる偶然なんだろね??と、ママも坊ちゃん達も興奮されておりました。

 

そして、バレンタイン・ディナーの時。坊ちゃん二人と私はお留守番し、パパとお二人でディナーを楽しまれていたママはシャンパンやら赤ワインやら注がれるままに調子に乗って飲んでいたら、酔いが回ってしまったようで。せっかくのディナーの味が分からなくなってきたので、これはいかんと、酔い覚ましにお手洗いに行かれました。

 

そこには4つトイレが並んでいましたが、左三つは、トイレットペーパーがでろーんと伸びており、使用された感がありました。一番右のトイレだけは、蓋も閉まっており、トイレットペーパーの端がきっちりと三角折りになっていましたので、これは、清掃直後で綺麗に違いない、とママは入られたそうです。

 

気分良くテーブルに戻ったその約15分後、ママ、まだフワフワして味がよくわからないので、再び酔い覚ましにトイレに戻られました。次はどこに入ろうかなーとチェックしてみたら、4つのトイレのうち、左三つは先ほどと同じく、誰彼に使用された感が。となると、やはりさっきの一番右が妥当なチョイスかねぇ、と、少なくとも自分が使用した程度の雰囲気を予測しながら入った瞬間、ママ、ちょっと混乱。

なぜならば、再び、トイレットペーパーの端がきっちりと三角折りになっていたのです。先ほど入ったときと全く同じように。

 

あれ?さっき、私が入ったばかりだよな・・・

ディナータイムのこの15分の間に、ホテルのトイレの清掃員さんが入るとは思えない。

仮に清掃員さんが入ったとしても、そのほかの三つのトイレはなぜそのまま放置?

そして、ディナーに来ている気取った面々の中に、こんな綺麗にトイレットペーパーを三角折する客がいるとは思えない。

 

・・・とママ、なんだかタイムスリップしてしまったような不思議な感覚に襲われたのですが、まあ、トイレットペーパーの舌先が三角形であろうがベローンとしてようが、どうでもええか〜とそれ以上は深く考えずに、テーブルに戻られたそうです。

 

久々に贅沢な時間を過ごされ気分よく帰られたお二人。こちらも、鬼のいぬ間になんとやら、Amazonプライム見放題でのびのびお留守番していた坊っちゃん達と私、機嫌よくお迎えさせていただきました。

 

高級志向の長男坊ちゃんは「何食べたん?美味しかったん?え?トリュフ?キャビアビーフウェリントンもあった?でも、それはゴードン・ラムゼイのとは違うやん。」と、知識では負けん気むき出し、かつ興味深々に聞いておられました。

その一方で、次男坊ちゃんは「見て〜歯が抜けた〜!」と抜けた第一小臼歯を指に挟んで自慢しておられました。

 

夜も遅くなっていましたので、パパとママ、坊ちゃん達に歯を磨いて早く寝るように促したところ、抜けた小臼歯を持って洗面所の鏡の前に立った次男坊ちゃんが

「あ、くっそ〜!」と叫ばれました。

どうやら、歯を磨こうとした際に、その小臼歯がコロン、と排水口に落ちてしまったようなのです。

そんな次男坊ちゃんの後ろ姿を見ていたママ、あらー、惜しいね、残念だね、まあそういうこともあるよね、と一通り慰めた後、シャワーを浴びてご自分のベッドに入られようとしたら。

 

・・・あったんですよ、ママのベッドの上に。排水口に転がり落ちたはずの歯が。

これは家族四人、目が飛び出るほどびっくり。さすがに私も、ちょっとびっくり。

 

パパ「これは量子力学の世界やな・・・。」

ママ「うん、量子力学の世界やな・・・。」

次男坊ちゃん「量子力学って何?」

 

ママは次男坊ちゃんにこんなことをおっしゃっていました。

「正直よく分からん。けど、排水口に落ちて消えてしまったはずの歯が、ベッドの上にテレポートしとったのは事実(だと、歯を見た私たちは信じている)。この目に見える世界の常識では起こりうるはずのない、こんな摩訶不思議な現象でも、量子力学っていう学問の世界では可能なことなんかもしれん。今日、歯がテレポートしたこと、絶対覚えてといて!将来、坊ちゃんが物理を勉強して分かったら、今日の現象を科学的にいつか説明欲しい。」

 

うーむ、文系のパパとママの思いつきで出た言葉ですから、抜けた歯のテレポートが本当に量子力学の世界と関係するのかどうか非常に怪しいところではありますが、このバレンタイン・デーの不思議現象、私も是非、いつか、人間の坊ちゃん達に解明していただきたいです。

 

だって、私は知っているんですもの。

 

 

あの霧の向こう側には、こちら側とはちょっぴり違う世界が広がっていること。