さんぽに行きましょう

スイスに住む 犬のつれづれ日記

加速するジェネレーションギャップ

まだ少し肌寒い先週の日曜日。

私の姉妹であるアスカと数ヶ月ぶりに再会いたしました。

 

どちらが姉だか妹だかは分かりませんが、まあ、そんなことはどうでもよろしいでしょう。

同じ日に同じ母のお腹から生まれた私達です。

どちらが私かお分かりになりますか?

私たちラゴットは、スーパーアクティブ。

2匹が揃うと「おさんぽ」などと、ひらがなほっこりレベルの外出ではおさまるわけがない。

 

ほぼ2時間ノンストップのレースでした。

捕まえれるもんなら捕まえてみなさい!!あら、あんた案外やるわね?

足の速さでは近所の誰にも負けない自信のある私ですが、この日はアスカに勝を譲ることになりました。さすが我が姉妹、侮れぬ。

 

やはり姉妹はよく似ますね。

でも、性格は違うんです。

私はおっとりマイペース型。滅多なことで怒りません。

あ、考えてみたら生まれてこの方、怒った記憶がありません。

でもアスカは、ちょっと怒りん坊さんです。

 

うちの坊ちゃんお二人を見ていても、確かに、どこかは似てるけど、どこかは全然似ていません。

あと、年を取るにつれて、似てなかった親子が似てきたりもしますよね。似たくないと思っている部分ほど似てしまったり。

血のつながり、家族って不思議です。

 

理想主義の我が家では、異色の存在ともいえる現実主義の長男坊ちゃん。その冷静な観察眼で、先日こんなことをおっしゃっていました。

 

「俺、おっさんみたいなことを言うけど、最近の小さい子はマジでヤバいと思う。画面を見てる時間が半端ない。W君の6歳くらいの弟、制限なしで動画見放題、ゲームやり放題。W君も、弟のことが心配だと。シンプルなことは言えても、細かい説明や感情を言葉に表せないらしい。俺らが6歳の頃は、もっとデジタル使用制限があったよなって話してた。」

 

・・・それ、長男坊ちゃんが言いますか?

と、ちょっと可笑しさを堪えながら横で聞いておりましたが、でも、確かにこれは面白い?怖い?現代の現象として捉えることができる、と私は思うのであります。

 

と言いますのは、最近こんなこともあったのです。

 

ある日、ママのフランス語レッスンにて。

現在の学校教育についてディスカッションがありました。

 

一人のブルガリア人のお母さん、8歳の息子がネットで勝手にいろんなことを自分で学んでしまって、もう学校で学ぶものはないから行きたくないと言って困る、との経験談を語られました。

 

それを聞いた20歳のスペイン人のOちゃんが、「なーにー!?」と奇声を発し、声高にこう反応しました。

 

「何それ?おかしくない?怖くない?私が8歳の頃は、友達と遊んでばっかりで、何を分かってるか分かってないかさえも分かってない子供だったわ!」

 

クラスに居た、ママを含む中年層のお父さん・お母さん世代の方々、Oちゃんの驚きに無言で静かに頷いていました。心の中ではきっと皆さんこう思っていたでしょう。

 

ーそう、その通り。そして、そうあって欲しい。

 

でも現実は、もやはそんな牧歌的風景が存在しないことを知ってしまっているパパママ世代。ティーンエイジャーのお子さんを持つフランス語の先生が、Oちゃんを制するように静かに答えられました。

 

「そう、びっくりでしょう。でも、本当に最近の子は早いのよ・・・。」

 

Oちゃんはそれでも納得できない様子で、ありえない、おかしい、と何度も呟いていたそうです。

 

それにしても、Oちゃんのような若い子にも、パパママ世代のように今の小学生の動向が理解できないなんて、新鮮な驚きでした。

多くの中高年の方々は、近頃の若い子は・・・と一括りにしがちですが、「若い世代」にもいろいろ段階があるのですね。

 

犬の私見ではありますが、その「若い世代」の中での段階も、近年のデジタル技術の発達や普及具合によって、加速的に細分化されているように思えるのです。

 

なにせまだ20歳のOちゃんが、もうすでに今の小学生に大きなジェネレーションギャップを感じているのですから。

それに加えて、先日、中学生の長男坊ちゃんがポロッと吐かれた6歳児への危惧。その差はたった6、7年。一体何が起こっているのでしょう。

コロナ禍以降、急激なデジタル化の波に、人間達は自分で思っている以上に飲み込まれていっているのかもしれません。

 

そこに来て、Oちゃんの、パパママ世代のような古風な反応は非常に興味深い。

近年、しばしばX世代、Y世代、Z世代、アルファ世代・・・という区分をベースに各世代の特徴分析がなされますが、Oちゃん曰く、20歳の自分はホニャララ世代(Oちゃん自身、名称を忘れてしまったので調べようがない!)と呼ばれる、これらの区分から漏れて隙間に落ち込んでしまっている年齢層だそうです。

 

ざっくり説明させていただきますと、Oちゃん達は、デジタルネイティヴのZ世代であるものの、その中でも、Facebookの隆盛期が過ぎてしまった、かつ、Tiktokがまだ流行っていない時代に育ち、どちらのブームにものれなかった層であるらしいです。

 

確かに、Oちゃんと同じ年頃の23歳のスペイン人M君も、不思議なことにママの価値観と似ているのです。OちゃんもMくんも、本気読書は紙派。Mくんはさらに、人気取りのために24時間ネット漬けになるYouTuberなぞなりたくもない、堅実に働いて会社に勤める方がよっぽどかいいさと言い切り、しっかり銀行勤めしておられます。

 

OちゃんとMくんは、デジタルツールを使いこなし、デジタル化社会へのオープンさもありながら、同時にパパママ世代の価値観も持ち合わせているのです。そして彼らの情報選択能力の高さ、フットワークの軽さ、批判的思考でもって自分の意見をしっかり形作っているところなどは、パパママ世代には無い何か突き抜けたものがあり、感心してしまいます。

 

私の周囲に見られる大多数の中高年の方達の傾向としては、加速するデジタル化の渦に巻き込まれ、よく分からないうちに時代の流れに迎合しようとしたり、逆によく分からないから悪だと決めつけむやみに否定してみたり。そしてその混乱の中で、何を血迷ったか、百害あっても一利ないような試みや判断をしてしまうことが多々ある気がいたします。

 

今、この世代の主導で人間社会が回っていっているのかと思うと、非常に心許ない。私は犬で良かった、とつくづく思います。

 

しかしながら、OちゃんやMくんのようなホニャララ世代に当たる若者の話を聞いていると、人間社会もまだ捨てたもんじゃない、と希望を見出せる気がいたします。

 

学校教育の話になると、どうも発展性のない話ばかりになりがちなパパママ世代のクラスメイトたちは、ホニャララ世代の若者達に「未来は君たちに託した!」と言い、M君の背中をボンっと叩いておりました。

 

次のアルファ世代に当たる坊ちゃん達になると、まだ未知数でありますが、画面漬けになってている幼稚園児の姿を危惧するような問題意識が彼らにも生まれているということは、やはり、パパママ世代の価値観も、全てが無に帰した訳ではなく、次の世代にも種として撒かれている、という証であると思います。

(それにしてもこの展開の早すぎるジェネレーションギャップはちょっと不気味ではありますけど。)

 

今すぐには分からなくても、10年先20年先にそれなりのものが咲くのだと思いますから、やはり、パパママ世代は、子供達の中に撒かれた種がその子らしいきれいな花を咲かせることを信じて、しんどくてもまだ踏ん張らねばならないでしょう。

 

ま、私はとりあえず、これからOちゃんM君のホニャララ世代に期待します。

そして、坊ちゃん達の世代も、今後どんな時代になろうとも、批判的思考を培うことだけは怠らず、ご自身が信じる道を選択し、たくましく生き抜いていっていただきたい所存です。

 

それにしても、ホニャララ世代、って正式名称、何なんでしょうね。

私の優れた嗅覚でもっても、探し当てれませんでした。

 

          ネットサーチには嗅覚が効きませんでした・・・とほほ。