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スイスに住む 犬のつれづれ日記

私のいない節分


2024年2月3日、節分の日。

 

福豆をビールのあてに、さあ、今から恵方巻きを東北東に向かって頬張ろうとする私。

 

 

・・・な訳はなく、その日、我が家での私の座を奪ったこのオオカミ野郎は『チク』と呼ばれる次男坊ちゃんの昔からの連れだそうです。

 

私はその日、初めてドッグシッターさんのお家でお泊まり練習をしておりました。

私の不在中に、坊ちゃん達がこのオオカミ野郎と仲良くしていたのかと思うと、ああ、憎い。嫉妬で気が狂いそうです。でも、このチク、実は私がこの家族にやってくる前からいた輩。すなわち、日本社会でいうところの先輩に当たります。ここは一つ、先輩たるものに敬意を払い、グッと嫉妬心を堪えることにしましょう。

 

そんな私のいない節分の日。

我が家では、毎年恒例の鬼パパがやって来たそうです。

 

 

子供部屋の窓をバンバン叩きながら、鬼パパ「グォー!ウォー!」

次男坊ちゃん、無邪気に「キャハハー!鬼はーそとぉ!ふくはー・・・なんちゃらかんちゃら、あれ、なんだったっけ?あ、ふくはぁーーうちぃ!」

鬼パパに向かってポーイと豆を投げます。

調子が出てきた鬼パパ、さらに暴れます。「グォー、グォー!!(もっと来い!)」

 

今度は長男坊ちゃん、若干、無邪気とは違う何かを感じさせる声で、滑舌よろしく「鬼はー外!!!」と叫びながら、甲子園球児のピッチャーを彷彿とさせるガチの投球ポーズで豆を鬼パパに投げつけます。

鬼パパ「痛い、痛い!まじで痛い!」

さらには鬼パパ、その後、近くに生息する野生動物のものであろう大きな糞まで踏んでしまい、すっかり心が萎えて、退散いたしました。

 

さて、みんなで作った恵方巻き。今年は東北東。すなわち・・・窓越しにお向いのアパートを凝視しながら言葉を交わさず一心に食べるおかしな4人の図、となりました。

それから約2、3分が経過し、皆さん完食した後。

 

次男坊ちゃん「かじる度にお願いしたけん、いっぱい願いごとできた!20個くらいかな?あ、くっそー!あと1個、願い事忘れとったぁ!!」

パパ、長男坊ちゃん、ママ「もう、ええやろ。」

 

ママ「(長男坊ちゃんに)あんたは何をお願いしたん?」

長男坊ちゃん「そんなもん人に言うたら、あかんやろ。」と不敵な笑みを浮かべて、食卓から離れて行きました。

我が家の愛すべきアレックス・キートンくん、何を願ったかは大体私には想像ついておりますがね。

 

※アレックス・キートン・・・1980年代にヒットしたアメリカのファミリーコメディドラマ『ファミリータイズ』のマイケル・J・フォックス扮するキートン家の長男。頭脳明晰で野心家の若い共和党員。人生の目標は「成功すること」と「金を稼ぐこと」の2つ。有名大学に進学し、元ヒッピーの両親のリベラルな政治観と対立し、しばしば衝突するが、根は心優しくて憎めないキャラクター。

 

坊ちゃん達の願い事、なんだかバラエティに富んで楽しそうですね。

パパとママのお二人は、ご自分のことよりも、家族のみんなの幸せに関することだったようです。お二人も、かつて若かりし頃は、自分のことで一生懸命願うことがあったのでしょうけれど。

願い事も、年とともに、色褪せて地味になってくる、いや、失礼、円熟していくものなのかもしれません。私からすると自分以外の存在のために一生懸命願うことがある、ということも、実は幸せなことのような気もします。

 

皆さんのどの願い事も、それぞれ叶うといいですね。

ま、次男坊ちゃんの場合は、お願い事すべて覚えていれば、ですけれど。

 

ところで、節分のイベントは逃してしまったものの、この日は、私にとって記念すべき日となりました。

 

なんと、ドッグシッターさんに連れて行かれたイベント「Repair Café」で、ジャーナリストさんの目にとまり、私、ローカル情報サイトに載ってしまったのです。

 

 

「ハサミを手にする〇〇さんのそばには、可愛い毛むくじゃらちゃんが」
毛むくじゃらちゃんとはレディーに向かって失敬な。

それは月に一度催される、壊れたもの何でも修理しますよ、というローカルイベントだったようです。

ドッグシッターさん「ジャーナリストさんが来てね、この可愛いワンちゃん、写真撮って載せていい?って言うから、もちろん、って快諾したのよ。モカチーノはこの日のスターね!」

 

老若男女を問わず、みんなに可愛がられ、さらにはローカル情報サイトに載り、目も眩むような脚光を浴びてしまった私。

きっと今は、チクが私への嫉妬心で気が狂っていることでしょう。