さんぽに行きましょう

スイスに住む 犬のつれづれ日記

トリュフ さんぽ道のドラマ

もう8月も最終日。

スイスの朝はすでに秋の訪れを感じさせるほどに肌寒くなってきました。

長かった夏休みも終わり、我が家の皆さんも先週から通常稼働を開始されたようです。

 

そんな人間の皆さんの動きとは反比例して、近ごろ朝はぼんやりモードの私。

 

 

今朝もサクッと終わらせる予定だったさんぽが思いのほか長引いてしまい、ドッと疲れております。

 

今日は朝からママも済ませたい用事があるとかで、短めになるからね、と私に宣言して出かけた早足での森さんぽのはずだったのに・・・

 

そういう日に限って、出会ってしまうんですね。久しく会っていない友人に。

今日のさんぽはこの辺で良かろうと踵を返したところに、向こうからハッハッとピンクのベロを出しながら大笑顔で尻尾を激しくふってやって来るビビちゃんの姿が見えたのです。ああ、これはとてもスルーできない。

 

ビビちゃんはポルトガル・ウォータードッグ。

オバマ元大統領が飼われていた愛犬と同じ犬種、といえばピンとくる方もいらっしゃいますかね?

さすが大統領のファースト・ドッグ。毛並みが美しい。(注:ビビちゃん本人ではありません)

 

ビビちゃんって見た目は割と私に似ているのですが、体の大きさとエネルギーは私の1.5倍。遊び始めはいいのですけど、お調子者のこの私でさえちょっと引いてしまうほどの興奮屋さん。ビビちゃんのこと大好きなんですけどね。10分遊べば正直、私はお腹一杯です。NOと言えない私にとって、サラッと済ませたい朝にはちょっと濃すぎのお相手なのです。

 

ビビちゃんの飼い主さんは長男坊ちゃんのクラスメイトのお母さん。いつも仕事にお忙しい方で「今度またゆっくり話したいね!」と、すれ違うことが多いのに、今日は何やらママとの話に花を咲かせたようでして。

 

お二人の間では、生産性のあるような無いような、両サイドからの機関銃トークがくり広げられていました。部下へのクビ宣告苦悩話から始まり、アラフィフ同士お互いに数年後に向けての目標を語り出したかと思えば、今の時代に子育てする難しさ、学校でのLGBTQや人種差別の取り上げられ方への疑問、等々・・・どれをとっても朝の散歩タイムのスモールトーク向けではない内容ばかり。

 

も、も、もういいですか。人間社会が大変なのはお察しします、大変ご苦労様です。でも、今一度、足元のあなた方の愛犬たちをご覧ください。今、私はビビちゃんに乗っかかれてるのの気づいてます?先ほどは駆けっこの末に体当たりされて私、吹っ飛ばされてましたけど?ねえ、見てました?後生だから早く家に帰らせてください・・・と話に熱中するお二人に必死に懇願の目に向け続けた私でありました。

 

このように毎朝、毎夕の散歩に行くことが1日のメインイベントである私の犬生。

 

何の変わり映えもしない日常をぼんやりと生きているようでありながら、今日のように散歩道でおてんばビビちゃんと出会って疲労困憊したり、学校の課外授業で森を探索している小学生集団に遭遇して「このワンちゃん、可愛い〜♡」なんてもてはやされて調子に乗った勢いで、次にジョギングしてる犬嫌いのおっさんにお愛嬌で飛びついてしまい「ちゃんと綱つけとけ、このバカ犬に!」と叱咤を受けることもあったりと、小さなドラマがたくさん起こっているんです。その時々で、嬉しかったり、悲しかったり、有頂天になったり、反省したり。

 

人間の方々から見れば、とるに足らないことばかりなのですけれど、

日常のそんな自分の小さなドラマを生き続けることが、私にとっての犬生なのです。

 

あ!そういえばこの夏休み、グルメの人間の皆さんにお伝えしたいドラマが起こったのです。

 

モカチーノ、このいつものさんぽ道でトリュフを掘り当てたのです♪ しかも2回。

手に乗せてその大きさと重さを感じとろうとするパパ

 

 

人間の皆様には最近モフモフのお調子者としてしか認識されていないようなので、念の為、もう一度お伝えしますが、何を隠そう私はトリュフ犬として名高いラゴット・ロマニョーロの血を正統に受け継ぐ犬者なのです。

 

パパ、朝とれたてのトリュフをどう食そうかと、ネットで調べてスクランブルエッグに乗せてみることにしました。

 

ふむふむ。美味しそう。

さて、そのお味は。

 

家族一同「・・・・。」

 

なんじゃこりゃ?

美味しくなくて、皆さんびっくり。

 

どうやら、私が見つけたのは、ナッツ風味の繊細な香りが特徴のサマートリュフで、クリームやオイルをつけることでその独特のトリュフの香りが活かされるようです。

 

それならこれはどうか、とパパ、いつものモッツァレラよりワンランク上の高級ブラータと、パパの大好きなイチジクに、同僚からいただいた希少な高級オリーブ・オイルをかけ、その上にトリュフをスライスして乗っけてみました。

 

 

さて、そのお味は。その2。

 

お?オリーブオイルとブラータの油分のおかげで、スクランブルエッグの時よりは確かにトリュフの香りが活かされている!

・・・けど、イチジクは、いらんかった。

いちじくの癖のある甘みとナッティーなトリュフの食感と極上にクリーミーで濃厚なブラータとろみ感が、見事に喧嘩し合っている。

トリュフとブラータはOK。いちじくとブラータもOK。でも、いちじくとトリュフがダメダメ。

 

これまたトリュフの風味を活かせず「せっかくモカチーノが見つけてくれたのにごめんねぇ。」と、しょんぼりするパパとママ。

 

まあまあ、そんなに気を落とさないでください。

また、きっと見つかりますよ。

 

何も起こるはずがないと思っている、いつものさんぽ道。

 

小さすぎて見落とすこともあるけれど、たくさん転がっているはずです。

その気になれば、必ず見つかります。

 

トリュフというドラマも。

それ以外のドラマも。

 

ただただ過ぎ去っていくように思われる日常の中でも、ちょっと面白くなるようなこと。